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千葉県民司法書士事務所

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2013年7月12日 (金)

賃料債権差押後の賃借人の混同

 賃料債権の差押後に,賃貸借契約が,賃借人の身分が所有者に変動(賃貸人が賃借人に目的不動産を譲渡により)終了した場合における,その後の賃料債権を取り立てることができるか否か?

 賃料債権を差押した後に,賃借人(第三債務者)が,目的物不動産を譲り受けた場合,その後の賃料債権を取り立てることができるかが争われた事案である。

 原審(大阪高裁平成22年3月26日判決)では,目的物譲渡前に本件差押命令が発せられており,本件賃貸借契約に基づく賃料債権は第三者の権利の目的となっているから,民法520条ただし書きの規定により,譲渡以降に期限の到来する賃料債権は,混同によって消滅することはなく,差押債権者は,取り立てることができるなどと判断した。

 しかし,最高裁は,譲渡後に期限の到来する賃料債権を取り立てることができるとした部分は是認することができないとして,その理由を次のように述べている。

 「賃貸人が賃借人に賃貸借契約の目的である建物を譲渡したことにより賃貸借契約が終了した以上は,その終了が賃料債権の差押えの効力発生後であっても,賃貸人と賃借人との人的関係,当該建物を譲渡するに至った経緯及び態様その他の諸般の事情に照らして,賃借人において賃料債権が発生しないことを主張することが信義則上許されないなどの特段の事情がない限り,差押債権者は,第三債務者である賃借人から,当該譲渡後に支払期の到来する賃料債権を取り立てることができない」,として,上記特段の事情の有無につき更に審理を尽くさせるため原審に差し戻したものである(平成24年9月4日判決)。

 つまりは,賃料を差し押さえた後(差押の効力が発生した後)に,賃借人が対象となる不動産の所有権を取得した場合,原則は,その後(所有権移転後)に支払期日の到来する賃料債権を取り立てることはできないけれども,賃借人において,賃料債権が発生しないことを主張することが信義則上許されないなどの特段の事情があれば,例外的に,譲渡後の賃料債権にも差押の効力が生ずる(取り立てることができる)余地がある,ということになります。

 

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