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千葉県民司法書士事務所

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2013年1月11日 (金)

司法書士会と商工会議所

 明日は,定例の常任理事会の開催日でありますが,前回の議案提案において,継続となってしまった議案について,述べたいと思います。

 議案は,「商工会議所会員に加入申込をすることの承認の件」です。

前回の会議では,司法書士会が,商工会議所の会員になることについて,会の目的に反しないかなど,今一度検討するように言われ,差し戻された議案でした。

 明日のは,要旨,次のような説明を考えております。

1 各単位会の状況

  全ての単位会から回答をもらったわけではないが(7会が未回答),単位会  で商工会議所の会員になっている単位会は,4会で,検討中の会が1会ある。

  また,単位会ではく,支部が商工会議所に会員になっている会も1会あった。

  単位会が,商工会議所の会員になるための承認機関についてもアンケートをとったが,常任理事会での承認が2会あり,常任理事会での報告のみで商工会議所の会員になった単位会は,1会あった(他1会については,意思決定機関は不明とのことであった)。

  このことから,特段,司法書士会が,商工会議所の会員になることについて,前例のない突飛なことでないことが理解できる。

2 本会の目的と商工会議所の目的

(1)司法書士会関連

  次に検討することとして,司法書士会の目的と,商工会議所の目的が相反するような関係にあるかである。

  まず,司法書士法52条2項において,「司法書士会は,会員の品位を保持し,その業務の改善進歩を図るため,会員の指導及び連絡に関する業務を行うことを目的とする。」としており,同条1項において,「会則を定めて,司法書士会を設立しなければならない。」とする。

  そこで,当会の会則をみると,第2条(目的)には,「司法書士の使命及び職責にかんがみ,その品位を保持し,司法書士業務の改善進歩を図るため,会員の指導及び連絡に関する事務を行うことを目的とする。」としており,この目的を達成するために,第3条(事業)において,

7号 福利厚生に関する事項

 12号 相談事業に関する事項

 14号 講演会及び講習会等の開催に関する事項

 15号 広報活動に関する事項

 16号 研修に関する事項

 20号 国民に対して司法書士が提供する法的サービスの拡充に関する事項

をそれぞれ掲げている。

(2)商工会議所全体

  商工会議所法第1条(法律の目的)として,「この法律は,国民経済の健全か発展を図り,兼ねて国際経済の進展に寄与するために,商工会議所及び日本商工会議所の組織及び運営について定めることを目的とする。」とし,同法第4条(原則)において,「商工会議所等は,営利を目的としてはならない(1項),特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として,その事業を行ってはならない(2項),これを特定の政党のために利用してはならない(3項),と規定している。

  同法第2章第1節(通則)にある第6条(目的)では,「商工会議所は,その地区内における商工業の総合的な改善発展を図り,兼ねて社会一般の福祉の増進に資することを目的とする。」と規定し,第9条(事業の種類)として,次の事業の全部又は一部を行うものとする,として,次の事業を掲げている。

 1号 商工会議所として意見を公表し,これを国会,行政庁等に具申し,又は建議すること。

 2号 行政庁等の諮問に応じて,答申すること。

 3号 商工業に関する調査研究を行うこと。

 4号 商工業に関する情報又は資料の収集又は刊行を行うこと。

 5号 商品の品質又は数量,商工業者の事業の内容その他商工業に係る事項に関する証明,鑑定又は検査を行うこと。

 6号 輸出品の原産地証明を行うこと。

 7号 商工業に関する施設を設置し,維持し,又は運用すること。

 8号 商工業に関する講演会又は講習会を開催すること。

 9号 商工業に関する技術又は技能の普及又は検定を行うこと。

 10号 博覧会,見本市等を開催し,又はこれらの開催のあっ旋を行うこと。

 11号 商事取引に関する仲介又はあっ旋を行うこと。

12号 商事取引の紛争に関するあっ旋,調停又は仲裁を行うこと。

 13号 商工業に関して,相談に応じ,又は指導を行うこと。

 14号 商工業に関して,商工業者の信用調査を行うこと。

 15号 商工業に関して,観光事業の改善発展を図ること。

 16号 社会一般の福祉の増進に資する事業を行うこと。

 17号 行政庁から委託を受けた事務を行うこと。

 18号 前各号に掲げるものの外,商工会議所の目的を達成するために必要な事業を行うこと。

  さて,司法書士会が商工会議所の会員となる資格を有するか,であるが,同法第15条(資格)において,「商工会議所の会員たる資格を有する者は,その地区内において,引き続き6箇月以上営業所,事務所,工場又は事業場を有する商工業者とする。但し,定款で別段の定めをしたときは,この限りでない。」として,第21条(退会)では,「会員は,60日前までに予告し,事業年度の終りにおいて商工会議所を脱退することができる。」

  上記第15条で規定されている内容について,産学連携や地域づくりなどで経済活動にかかわる人たちが多様になってきたことを受けて,平成14年3月に,経済産業省が通達で解釈の幅を拡大して,各会議所が定款を見直せば,学校法人,医療法人,弁護士,医師なども入会できるようになった。

(3)松戸商工会議所

  加入資格として,「松戸市内で営業をしている商工業者で,法人,団体,個人事業主を問わず,誰でも加入でき,商工業者以外や,市外の商工業者の方であっても,商工会議所の趣旨に賛同する者は,特別会員として加入できる。」としている。

(4)司法書士と商工会議所

  両団体に共通するのは,法律に基づいて設立されており,非課税規定の所得税別表第1に記載されているなど,営利を目的とせず,公益を目的としている点にある。

  また,司法書士会は,「司法書士業務の改善進歩を図るため」,一方,商工会議所は,「商工業の総合的な改善発展を図り,社会一般の福祉の増進に資する」としている。

  司法書士会が,商工会議所の会員となった場合,司法書士会の目的達成のための事業として,通ずる部分があるのかであるが,上記会則第3条各号にあてはめると,7号,12号,14号,15号,16号,20号を実現するために会員になることは,肯定されると思われる。

  逆に,商工会議所側みても,商工会議所法第9条8号において,司法書士会として連携をして行うことは可能であるし,第11及び12号については,千葉司法書士会調停センターとの連携も可能である。

 第13号については,司法書士会と事業目的が一部一致するところであり,16号についても,司法書士会としてこの事業に反するものではない。

  司法書士法施行規則第31条第1項では,「当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により,管財人,管理人その他これらに類する地位に就き,他人の事業の経営,他人の財産の管理若しくは処分を行う業務又はこれらの業務を行う者を代理し,若しくは補助する業務」と規定されており,司法書士として中小企業等に関する事業承継や事業再建などの問題について,今後,積極的に取り組んでいかなければならない現状をかんがみても,司法書士会と商工会議所は,ますます連携を密にしなければならないといえる。

(5)小活

  司法書士法及び会則からも,「司法書士業務の改善進歩」を図るための諸事業と,商工会議所の目的・事業からみても,相反するものはなく,むしろ合致するか,あるいは,これから合致するような連携体制を取ることは,双方の目的・趣旨に沿うものであり,司法書士会が商工会議所の会員になることについて,問題はないと考える。

3 連合会の方針

(1)細田連合会会長が就任した当時の就任挨拶に,「現在司法書士は,自ら行ってきた手続き全般において地盤を固める時期にきています。そのために,連合会をはじめとして各司法書士会が組織的に対応できるシステムを確立する必要があると考えます。そのためには,いろいろな関係機関との協力が不可欠となります。士業間の協力や市民団体との協働が必要不可欠になってきております。連合会においても,広く意見を聞くために,日本商工会議所の事務局長の方に理事として就任して頂いております。今年度中に,同会議所との連携システムを構築したいと考えております。この分野においても,各地の商工会議所と各司法書士会との連携について全国の会員の協力をお願いする次第です。」と,司法書士,司法書士会,商工会議所の連携の必要性を述べられている。

(2)上記,員外理事である,日本商工会議所理事・事務局長の坪田秀治氏は,月報司法書士の中で,「そもそも員外理事をお引き受けしたのは,商工会議所と司法書士は,日頃から「会社登記」だけでなく,企業法務や事業承継など幅広い分野においてアドバイスを受けるなど,密接な関係があるからである。」と述べられ,連合会の次の目標が見えてくると同時に,今後,今以上のつながりは,両組織においても重要であり,また,司法書士が,全国に420万社ある中小企業の相談相手になると同時に,中小企業を支援する体制の構築も必要不可欠なことといえる。

(3)以上を総合的に考えると,司法書士会が商工会議所の会員になることについて,何らデメリットがないだけではなく,むしろ,今後将来,より密接に連携をとって,中小企業の元気を取り戻し,社会経済の発展に司法書士としても寄与すると同時に,地元でこれまで頑張ってきた中小企業者の喫緊の課題して浮上している事業承継についても,研鑽を積んで,積極的に関与していかなければならないといえる。

4 まとめ

   司法書士法,司法書士会,商工会議所法,商工会議所をそれぞれ見てきたが,何れの法律でも,相互に相反する目的などなく,その目的を達成するための諸事業についても,相通ずる部分も少なからず存在している。

   また,両組織とも公益法人等の関係もあって,特定の営利を追及するものではなく,公益的な活動を行う団体であることから,商工会議所が会員として定款上抵触することなく,入会を認めるのであれば,司法書士会として商工会議所の会員になることに何ら支障なく,むしろ,財政が許すのであれば,積極的に係わっていくことが,今後司法書士会としても重要な活動の一つになると考えられることから,会員となることについて,承認いただきたく提案する。

   さて,明日どうなることやら,分かりませんが,上記にもう少し膨らませる内容も盛り込んで,提案者として,説得したいと思います。

  明日の常任理事会では,外に3本の提案がありますが,これは多分承認されると思われますので,この1点のみ,今一番気になる部分です。

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